会社法改正は保険営業のチャンス!?

水谷 力
2021.03.29

会社法改正で役員等賠償責任保険(D&O保険)の定義が明確に
 2021(令和3)年3月1日、会社法の改正で創設された役員等賠償責任保険についての規定(会社法430条の2、430条の3)が施行されました。

 役員等賠償責任保険(D&O保険=Directors and Officers Liability Insurance)は、役員等に対して、株主代表訴訟等の損害賠償請求がなされた場合に、その役員等が負担する損害賠償金などを、一定の範囲で補償する保険です。これまでの会社法には、D&O保険についての規定は設けられておらず、一般に法人向けの保険商品の一つとして保険会社で販売されてきました。

 D&O保険には、損害賠償責任を追及されることを極端に恐れて役員等が職務執行に際して萎縮してしまうことを防ぐだけでなく、優秀な人材を役員等に迎えやすくなる効果も期待されています。反面、会社が役員等個人を訴訟から守るために保険料を払うことは問題でないか(会社の役員等対する金銭的保護は会社と役員等の間で利益相反取引規制に該当しないか)、「D&O保険に入っていれば訴えられても大丈夫」というように役員等のモラル上の問題が生じることが懸念されていました。

 そこで改正会社法によってD&O保険についての規定が設けられ、要件を満たせば会社はD&O保険を契約することが可能であると明文化されました。その中でD&O保険は、「株式会社が、保険者との間で締結する保険契約のうち役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が塡補することを約するものであって、役員等を被保険者とするもの」と定義されています。
契約内容を決めるには取締役会等の決議が必要
 株式会社がD&O保険の契約内容を決定するには、取締役会等の決議が必要であると規定されています。さらに、D&O保険で取締役・執行役を被保険者とするものについては、利益相反取引規制を適用しないこととされています。

 ただし、上記が適用されるのは2021年3月1日(改正会社法施行)以後に契約されたD&O保険に対してです。それより前に契約されたものについては、改正会社法は適用されません。そこで、施行前に契約されたD&O保険については、自動更新のタイミングで取締役会等で契約内容を決定して決議することと解釈されています。

 このような会社法の改正についてご存じない経営者の方は少なくありません。また、法改正を認識している経営者の方の中には従来の補償内容を見直す動きも出てきています。この機会に、D&O保険について経営者の方に情報提供やアドバイスをされてはいかがでしょうか。
【参考情報】
 生命保険の募集人の方は、上記のD&O保険の話から生命保険の話につなげることも可能です(詳しくは以下の書籍が参考になります。)
「違いを生み出す生損保リスクチェック」
第3章 アプローチの実践・損保の話題からリスクチェックへ
法人編6 役員が経営に関して損害賠償請求を受けたら?
定価 1,210円(税込)
A4判/80ページ
http://www.fps-net.com/shopping_03304710.html
姉妹書
「違いを生み出すファーストアプローチ」
定価 1,210円(税込)
A4判/72ページ
http://www.fps-net.com/shopping_03304509.html
水谷 力(みずたに・ちから)
株式会社セールス手帖社保険FPS研究所
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/組織開発コンサルタント

大手保険会社在職中にFP資格やコーチング資格等を取得。現在は各種執筆活動などをおこなっている。著書には、「違いを生み出すファーストアプローチ」「違いを生み出す生損保リスクチェック」(いずれもセールス手帖社保険FPS研究所)がある。

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