育児・介護休業法、2022年4月からの改正ポイント

庄司 英尚
2021.12.06

改正は3回に分けて施行される
 No.4185「来年10月から月内2週間の育児休業も社会保険料免除に」において、育児・介護休業法の改正が順次施行され、健康保険法・厚生年金保険法も改正されて社会保険料免除の仕組みが少し変更になることをまとめた。

 今回は3段階で順次施行されていく育児・介護休業法の改正内容の中から、2022(令和4)年4月1日施行分についてポイントを整理する。
労働者個別の休業の取得の意向確認は重要
 今回の改正は、父親の育児休業取得を促進ということがよく報道されているが、父親に限らず母親も希望すれば仕事や育児を両立するために柔軟に休業できる状態をつくることを目的としている。2022年4月1日からは以下の3点が改正されることになっている。
事業主に対して、育児休業を取得しやすい雇用環境整備や周知・意向確認を義務化
妊娠や出産について、申し出をした労働者(本人または配偶者)に対して個別に周知・意向確認をする
有期雇用労働者について育児・介護休業の取得要件を緩和(これまでの「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件は撤廃)
法改正対応に早急に着手すべき
 上記1の育児休業が取りやすくなるような雇用環境整備の義務については、下記の4つのうちいずれかを実施しなければならず、できる限り複数項目を行うことが望ましいと国は案内している。
育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
 上記2について補足すると、本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主が育児休業の取得意向の確認を個別に行わなければならないわけだが、これは社内的には実務が複雑になると予想される。なお、個別に周知すべき事項は次のとおりとなっている。
育児休業・産後パパ育休に関する制度
育児休業・産後パパ育休の申し出先
育児休業給付に関すること
労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
 当然ながら、取得を控えさせるような形での個別周知と意向確認は認められていないので注意が必要だ。男性の育児休業取得が話題になっており、配偶者が出産の予定などで会社に相談することも増えてきており、その際に育児休業の取得希望について意向を確認する必要があるが、誤った対応によってトラブルになることは防がなければならない。なお、意向確認方法については面談、書面交付、FAX、電子メール等のいずれかで行わないといけないのでその点も押さえておきたい。

 このように2022年4月1日施行分だけでも重要な項目がたくさんあるので、まずは法の趣旨をよく理解し、就業規則の改定、書式の整備だけでなく社内研修などの充実にも力を入れていただきたい。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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