店舗等での転倒事故多発! 所有(管理)者の責任を問われたら?

水谷 力
2021.12.27

 近年、店舗等の施設での転倒事故をめぐって、被害者(転倒した人)側から施設側へ損害賠償をもとめる裁判が相次いでいるようです。転倒による事故というと、たとえば、以下のような事例が想定されます(実例をもとに一部省略・改編したものもあります)。
飲食店街の通路の床面が油で汚れていたため、歩行者が滑って転倒
店から外に出ようとした際、閉まりかけた自動ドアにおされて転倒
店舗の通路の床に落ちていたアイスクリームに気づかずに歩行者が滑って転倒
賃貸マンションの共用階段を下りていた際に、踊り場のはがれた床につまずいて転倒
夜間に集合住宅の通路を歩行中、置いてあった植木鉢につまずいて転倒
 このような事故は、被害者側(ケガをした側)にとってはもちろんのこと、加害者側(施設側)にとっても「痛い」事故といえます。それは、被害者側から高額の損害賠償が求められるおそれもあるからです。実際に、裁判の結果数千万円の損害賠償が求められる事例も少なくありません。また、上記のような事故は、大規模な商業施設やマンションなどの施設でなくても、個人の戸建て住宅などでも発生する可能性があります。もしその住宅の来客などが転倒してケガをした場合は、住宅の所有者に損害賠償責任が発生することもあり得ます。
利用者の店頭事故防止と万が一の保険での備え
 そこで、施設側としては、まずはこのような事故を発生させないことが大切です。そのためには、床をこまめに清掃するとか、床に滑り止めを付けるとか、段差をなくすとかなどの対策を施すことが考えられます。

 上記のような事故防止対策を施したとしても、事故が避けられなかったときは、いよいよ保険の出番です。便宜上、被害者側(ケガをした側)と加害者側(施設側)に分けて検討します。

被害者側(ケガをした側)の保険活用
 ケガによる通院・入院に備えるとしたら傷害保険、医療保険(特約)などで対応します。また、療養が長期化して働けなくなる事態まで想定するならば、所得補償保険や就業不能保険なども検討の対象になります。

加害者側(施設側)の保険活用
 「施設の管理」「仕事の遂行」等に伴う賠償事故を補償する保険として、施設賠償責任保険(保険会社によって名称は異なる)で対応します。この保険は、施設(建物)の火災保険の特約として契約することができる場合もあります。一般の戸建て住宅であっても、商業施設ほどではないにせよ所有(管理)者の責任を問われるリスクはあります。住宅での来客の転倒・骨折事故などを耳にすることも増えてきました。特に、普段、来客が多い住宅なら是非検討しておきたい補償です。

 最近は、社会の高齢化に伴い、高齢者による転倒事故も多く発生しています。上記のような事故防止対策に加えて、保険で備えることも忘れずに検討しておきたいポイントです。
【参考情報】
生命保険の募集人の方は、上記のような施設賠償責任の話から生命保険の話につなげることも可能です(詳しくは以下の書籍が参考になります)。
お陰様で4刷目に突入。ますます売れています!
「違いを生み出すファーストアプローチ」
第2章
アプローチの実践<法人・特定マーケット編>
第2話
自社ビルで水もれ事故発生!巨額の賠償請求で資金繰りがピンチに!?
第5話
賃貸マンション内で入居者が転倒して大ケガ!オーナーが責任を問われたら…
定価 1,210円(税込)
A4判/72ページ
https://www.fps-net.com/php/cms/cmsDtl.php?id=36&categorycd=0
「違いを生み出す生損保リスクチェック」
第3章
アプローチの実践・損保の話題からリスクチェックへ
法人編8
賃貸アパートの網戸が外れて通行人を直撃、賠償責任を問われたら…
定価 1,210円(税込)
A4判/80ページ
https://www.fps-net.com/php/cms/cmsDtl.php?id=34&categorycd=0
水谷 力(みずたに・ちから)
株式会社セールス手帖社保険FPS研究所
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
組織開発コンサルタント

大手保険会社在職中にFP資格やコーチング資格等を取得。現在は各種執筆活動などをおこなっている。著書には、「違いを生み出すファーストアプローチ」「違いを生み出す生損保リスクチェック」(いずれもセールス手帖社保険FPS研究所)がある。

▲ PAGE TOP