夫婦の年金~生計維持関係~

三角 桂子
2024.11.21

 前回(No.4750)に引き続き「夫婦の年金」についてお伝えします。今回は、夫婦の年金に必要不可欠な「生計維持関係」についてです。

 公的年金は、老齢・遺族・障害と3種類あります。例えば夫婦であれば要件に該当すると遺族年金が受給でき、また老齢年金であれば、配偶者加給等が加算されることもあります。

 ただし、夫婦であっても生計維持関係にないと受給要件に該当せず、年金を受け取れないこともあります。実際に年金の請求で必要な「生計維持関係」とは、どのような要件でしょうか。
生計維持関係とは
 日本年金機構のホームページで生計維持(生計を維持されている)とは、原則、次の要件をいずれも満たす場合をいいます。
1 生計を同じくしていること
 配偶者と同居していること。別居していても、仕送りをしている、健康保険の扶養親族である等の事項があれば認められます。

 例えば、単身赴任で住所が異なっていた場合でも、健康保険の被扶養者になっていたり、定期的に送金している場合などのときは、会社の辞令等を「生計同一に関する申立書」に添付すること等で認められます。
2 収入要件を満たしていること
 前年の収入が850万円未満であること。または所得が655万5千円未満であること。

 例えば、前年の収入が850万円以上あった場合でも、5年以内に定年退職によって将来にわたって得られないと認められる時には、就業規則等を添付することで認められます。
事実婚であっても認められる
 戸籍上の配偶者であれば、前段の要件に該当すると、生計維持関係があるといわれています。さらに、事実婚であっても要件に該当すると、生計維持関係が認められます。厚生労働省の「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」の通知では下記のように記載されています。

 事実婚関係にある者とは、いわゆる内縁関係にある者をいうのであり、内縁関係とは、婚姻の届出を欠くが、社会通念上、夫婦としての共同生活と認められる事実関係をいい、次の要件を備えることを要するものであること。
当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があること。
当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在すること。
 例えば、住民票を同じくしていて続柄に「未届の妻(夫)」と記載されている場合や、健康保険の被扶養者になっている場合などが該当します。
まとめ
 戸籍上の配偶者であっても、夫婦関係が形骸化している場合、生計維持関係は認められません。例えば、別居し、経済的な依存関係がなく、音信や訪問等の状況がない場合、生計維持関係があるとはいえません。実態としてかけ離れていないことが必要です。
参考:
三角 桂子(みすみ・けいこ)
社会保険労務士法人エニシアFP 代表社員
FP・社会保険労務士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルとあらゆる立場を経験し、FPと社会保険労務士として開業し、5年目に法人化(共同代表)。
FPと社会保険労務士の二刀流を強みに、法人・個人の労務、年金の相談業務やセミナー、執筆など、幅広く行っている。
常に自身の経験を活かし、丁寧な対応を心がけ、生涯現役に向かって邁進中。
法人名はご縁(えにし)に感謝(ありがとう)が由来。

公式サイト https://sr-enishiafp.com/

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