えっ? 従業員が出産・育児のために休業したら保険金が支払われるの?
2025.04.14
育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)が改正され、2025年4月1日から施行されています(一部は2025年10月1日などから施行)。この改正の「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」についての主な内容は以下のとおりです。
子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充についての主な内容
①
3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置を講じ(※)、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付ける。また、当該措置の個別の周知・意向確認を義務付ける。(2025年10月1日から施行)
※
始業時刻等の変更、テレワーク、短時間勤務、労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与、その他働きながら子を養育しやすくするための措置のうち事業主が2つを選択
②
所定外労働の制限(残業免除)の対象となる労働者の範囲を、小学校就学前の子(従来は3歳になるまでの子)を養育する労働者に拡大。(2025年4月1日から施行)
③
子の看護休暇を子の行事参加等の場合も取得可能とし、対象となる子の範囲を小学校3年生(従来は小学校就学前)まで拡大するとともに、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止。(2025年4月1日から施行)
④
3歳になるまでの子を養育する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加。(2025年4月1日から施行)
⑤
妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮を事業主に義務付ける。(2025年10月1日から施行)
上記法改正に対応した保険(特約)
一方、事業者にとっては、労働者が子の出産や育児のために休業した場合、費用の負担を余儀なくされる場合があります。そこで、そのような場合に対応するための保険がリリースされています。それは、「出産・育児休業支援費用補償特約」(保険会社によって名称が異なる)です。この特約では、次のいずれかの事象に該当した場合、事業者が対象となる費用を負担することによって被る損害に対して、保険金が支払われます。
事象 |
①
休業を開始した日からその日を含めて、法定休業(労働基準法に基づく産前産後休業、育児介護休業法に基づく出生時育児休業または育児休業)により合計で31日以上休業した場合
②
休業を開始した日からその日を含めて、出生日以降に法定休業以外の制度による休業を含めて連続して31日以上休業した場合(ただし、法定休業を6日以上取得したときに限る)
|
対象となる費用 |
①
休業する従業員へ支給するものとして定める金銭
②
休業する従業員とは別の従業員へ、休業の取得推進のために支給するものとして定める金銭
|
支払限度額 |
1回の休業につき、以下①②の合計で30万円を限度 対象となる費用①:3万円 対象となる費用②:補償対象者1名あたり3万円 |
この特約の趣旨は、育児休業取得者本人や同僚に対する手当金を補償することで、仕事と育児の両立を後押しし、出産・育児を職場全体で支え合い、応援する企業風土の醸成を支援することにあります。
事業者(企業)としては、法改正への対応の一環として検討しておきたい特約です。この特約は、業務災害補償保険(保険会社によって名称が異なる)に付帯することができます。
事業者(企業)としては、法改正への対応の一環として検討しておきたい特約です。この特約は、業務災害補償保険(保険会社によって名称が異なる)に付帯することができます。
【参考情報】
生命保険の募集人の方は、上記のような損害保険の話から生命保険の話につなげることも可能です(詳しくは以下の書籍が参考になります)。労務リスクの話題からのアプローチトークも収録されています(第2章第1話:労災事故や社員の自殺で会社の過失が認定された!巨額の賠償請求は保険で補償されるの?、第6話:えっ、上司が部下にパワハラ?会社の責任にもなるの!?)。


水谷 力(みずたに・ちから)
株式会社セールス手帖社保険FPS研究所
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
組織開発コンサルタント
大手保険会社在職中にFP資格やコーチング資格等を取得。現在は各種執筆活動などをおこなっている。著書には、「違いを生み出すファーストアプローチ」「違いを生み出す生損保リスクチェック」(いずれもセールス手帖社保険FPS研究所)がある。
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
組織開発コンサルタント
大手保険会社在職中にFP資格やコーチング資格等を取得。現在は各種執筆活動などをおこなっている。著書には、「違いを生み出すファーストアプローチ」「違いを生み出す生損保リスクチェック」(いずれもセールス手帖社保険FPS研究所)がある。