住宅ローンの審査②

有田 宏
2025.10.20

前回(No.4916)に引き続き、住宅ローンの審査が通らないケースについてご紹介します。年収、勤務先、勤続年数、年齢、過去の延滞の有無、健康状態、それら全てに問題はないはずなのに、なぜか住宅ローンの審査が通らない。

 このようなことも、ごくたまにあります。団体信用生命保険の加入を保険会社から謝絶された場合を除き、ローンが通らない場合、多くの場合は明確な理由を金融機関は明示してくれません。特別思い当たる節が無い場合どのようなケースが考えられるのでしょうか。
本人が認識していない個人信用情報
 本人名義のカードを家族が利用していても、そのカードで延滞が発生すれば本人の延滞とされます。また連帯保証人等を付ける場合、連帯保証人の個人信用情報に延滞が有ればローンは謝絶となります。もちろん、その旨は、本人および連帯保証人にも通知はありません。

 さらにイレギュラーなケースとして、クレジットカードの買い物のトラブルで、購入を取り消した場合など、カード会社等に誤った情報が残されている可能性があります。対策としては、家族にも状況を聞く、自身の個人信用情報を開示してみる、などがあります。なお、連帯保証人の分は連帯保証人本人の請求でしか開示できません。
家計等に重大に疑念点がある
 例えば、収入や勤続年数にも全く問題ない。しかし、「ローンの頭金が無い、他の金融資産が異様に少ない。本来であれば十分な頭金や金融資産を備えているはず」というような場合、その家計に重大な問題、例えば浪費癖、あるいは個人信用情報にも現れない負債の存在など、金融機関はいろいろと勘繰る場合があります。

 また、住宅購入の動機が不自然。家族構成に適合しそうにもない住宅の取得など。これらは実は投資用物件の購入ではないのか、または業者と結託した資金の流用ではないのか等も想定されることもあります。

 対策としては、止むを得ない事情がある場合は、悪い情報であっても金融機関に事情を説明できるようにしましょう。金融機関も本当に止む負えない事情があれば納得してくれることもあります。
宅建業者の問題
 その業者が、過去に金融機関とトラブルを起こした、例えば請負金額の水増しが発覚した、業者の経営状態は実は問題がありそう等。金融機関は「実はあの業者は問題がありまして……」とは言いません。これも単に金融機関の誤解であれば他の金融機関を変えてみる、そのような対策が考えられます。
さいごに
 個人信用情報を除く上記の要件は、必ずしも全ての申込人に対しチェックを行う訳ではありません。また金融機関も、いわゆるノルマがあれば多少の事は目をつむる、と言うことも考えられます。

 それでも、特別思い当たる節が無いにもかかわらず、なぜかローンが断られて、と言う場合は上記の可能性も考えておくことが有益です。クレジットの誤登録の可能性が考えられれば開示してクレジット会社と交渉する道もありえます。

 なお、自営業者の場合は取引先に反社(反社会的勢力)がいないかどうかも、審査には影響することが考えられます。
有田 宏(ありた ひろし)
NPO法人北海道未来ネット代表理事
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後、金融機関勤務を経て、現在はNPOとして主に消費者向けの相談や講演などを行っております。
金融、相続、住宅ローンに詳しく、それぞれのクライアントの価値観を尊重したアドバイスを心がけております。

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