「2026年問題」は起きたか
2026.09.07
60年前の「丙午」の出産控え
前月のコラム(No.5082 推計値を置き去りにする少子化の速さ | FPS-net)で、出生数と出生率が10年連続ダウンという、現在の少子化の実態についてお伝えしました。出生数・率の低下は第2次ベビーブームが終わる1970年代中頃から半世紀にわたって続いている大きな流れです。しかしそれ以前にも、1950年代に第1次ベビーブーム後の反動といえる低下時期がありました。さらに、1966年には「丙午(ひのえうま)」による1年限りの極端なダウンが発生しています。
昨年4月、「『2026年問題』はあるか」(No.4836 「2026年問題」はあるか | FPS-net)と題したコラムを書きました。「20xx年問題」と呼ばれるものは種々ありますが、「2026年問題」は実は私の造語です。ご存知のとおり今年は「丙午」。60年前の前回の丙午は、出生数が前年比25%も落ち込み、それまで“2”を超えるのが普通だった合計特殊出生率が、“1.58”という当時では考えられない数字を記録しました。とっくにテレビが普及していた時代に、誰でも迷信だと分かるはずの言い伝えが“出産控え”という行動を促してしまったのです。現代はSNSが影響力を持つ時代だけに、誤った情報の拡散による令和版の丙午問題が発生しないか心配していたわけです。
昨年4月、「『2026年問題』はあるか」(No.4836 「2026年問題」はあるか | FPS-net)と題したコラムを書きました。「20xx年問題」と呼ばれるものは種々ありますが、「2026年問題」は実は私の造語です。ご存知のとおり今年は「丙午」。60年前の前回の丙午は、出生数が前年比25%も落ち込み、それまで“2”を超えるのが普通だった合計特殊出生率が、“1.58”という当時では考えられない数字を記録しました。とっくにテレビが普及していた時代に、誰でも迷信だと分かるはずの言い伝えが“出産控え”という行動を促してしまったのです。現代はSNSが影響力を持つ時代だけに、誤った情報の拡散による令和版の丙午問題が発生しないか心配していたわけです。
図1 前回の丙午(1966年)前後の出生数と合計特殊出生率

出所)
厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」をもとに作成
心配していた「2026年問題」は起きたか
さて、実際はどうでしょうか。最終的な結果は来年まで待つ必要がありますが、ここまでで分かる範囲で答え合わせをしてみることにします。
前回の丙午の際は、図1にも表れているように、前年に「駆け込み」、翌年に「繰り延べ」と思われる出産増がみられました。手元にある今年5月までの出生数のデータをもとに、昨年に駆け込みがあったか、今年の前半に目立った落ち込みがあったかを確認してみましょう。図2は2023年以降の月別の出生数です。日数の違いが影響しないように、出生数は各月の日数で割った1日平均で表しています。
2024年と25年の1日あたりの出生数を比べると、殆どの月で25年のほうが24年の同月よりやや減っています。ただし、その減少幅は、2023年から24年への減少幅に比べると小さい月が多く、出生数の減少傾向がいくらか緩んでいるように見えます。とはいえ、「駆け込み」の特徴である年の後半ほど出生数が目立って増える傾向は見られません。また、2023年と24年は11月より12月が下がっているのに対し、25年だけは逆に上がっていますが、この部分だけをもって年末ぎりぎりの駆け込み出産だとするのは少々無理がありそうです。どうやら「駆け込み」は発生していないと思われます。
また、2026年は5月までを見る限り25年と同等か、4月はむしろ増えており、今年に入ってからの落ち込みは発生していないと言えるでしょう。
前回の「丙午」は第2次ベビーブームに向かう出産増の時期でした。前年の駆け込みと翌年の繰り延べによる出産増で、当年の落ち込み分はほぼ埋め合わせができています。出産したいという気持ちは維持されていたということだと思います。一方、現代のように少子化が進むトレンドの中で仮に出産控えが発生すると、出産に対するマインドが戻らず、少子化に拍車をかけてしまうのではないでしょうか。私はそれを心配していたのです。
結論を出すには早いですが、おそらく「2026年問題」は私の杞憂だったのでしょう。むしろ昨年の秋以降、出生数は前年比で堅調な動きを示しています。この背景には婚姻数の2年連続増加(2024、25年)があるとみられます。もっとも婚姻数は今世紀に入ってからずっと減少傾向だった上に、コロナ禍で急減した後の微増ではありますが。
いずれにしても、上向きの兆しが見られるのは嬉しいことです。さらに、実はこれが丙午で出産が抑えられた結果であって、来年に反動の大きなプラスが生じることになると……。さすがにこれは妄想がすぎますね。
前回の丙午の際は、図1にも表れているように、前年に「駆け込み」、翌年に「繰り延べ」と思われる出産増がみられました。手元にある今年5月までの出生数のデータをもとに、昨年に駆け込みがあったか、今年の前半に目立った落ち込みがあったかを確認してみましょう。図2は2023年以降の月別の出生数です。日数の違いが影響しないように、出生数は各月の日数で割った1日平均で表しています。
2024年と25年の1日あたりの出生数を比べると、殆どの月で25年のほうが24年の同月よりやや減っています。ただし、その減少幅は、2023年から24年への減少幅に比べると小さい月が多く、出生数の減少傾向がいくらか緩んでいるように見えます。とはいえ、「駆け込み」の特徴である年の後半ほど出生数が目立って増える傾向は見られません。また、2023年と24年は11月より12月が下がっているのに対し、25年だけは逆に上がっていますが、この部分だけをもって年末ぎりぎりの駆け込み出産だとするのは少々無理がありそうです。どうやら「駆け込み」は発生していないと思われます。
また、2026年は5月までを見る限り25年と同等か、4月はむしろ増えており、今年に入ってからの落ち込みは発生していないと言えるでしょう。
前回の「丙午」は第2次ベビーブームに向かう出産増の時期でした。前年の駆け込みと翌年の繰り延べによる出産増で、当年の落ち込み分はほぼ埋め合わせができています。出産したいという気持ちは維持されていたということだと思います。一方、現代のように少子化が進むトレンドの中で仮に出産控えが発生すると、出産に対するマインドが戻らず、少子化に拍車をかけてしまうのではないでしょうか。私はそれを心配していたのです。
結論を出すには早いですが、おそらく「2026年問題」は私の杞憂だったのでしょう。むしろ昨年の秋以降、出生数は前年比で堅調な動きを示しています。この背景には婚姻数の2年連続増加(2024、25年)があるとみられます。もっとも婚姻数は今世紀に入ってからずっと減少傾向だった上に、コロナ禍で急減した後の微増ではありますが。
いずれにしても、上向きの兆しが見られるのは嬉しいことです。さらに、実はこれが丙午で出産が抑えられた結果であって、来年に反動の大きなプラスが生じることになると……。さすがにこれは妄想がすぎますね。
図2 月別出生数(1日平均)(速報値)

出所)
厚生労働省「人口動態統計速報(令和8(2026)年5月分)」等をもとに作成

森 義博(もり・よしひろ)
公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団 シニアアドバイザー
CFP®、1級FP技能士、1級DCプランナー、ジェロントロジー・マイスター
1958年横浜市生まれ。大学卒業後、国内大手生命保険会社入社、2001年から同グループの研究所で少子高齢化問題、公的年金制度、確定拠出年金、仕事と介護の両立問題などを研究。2015年ダイヤ高齢社会研究財団に出向し研究を継続。2024年4月から現職。
趣味はピアノ演奏と国内旅行(とくにローカル鉄道)。
CFP®、1級FP技能士、1級DCプランナー、ジェロントロジー・マイスター
1958年横浜市生まれ。大学卒業後、国内大手生命保険会社入社、2001年から同グループの研究所で少子高齢化問題、公的年金制度、確定拠出年金、仕事と介護の両立問題などを研究。2015年ダイヤ高齢社会研究財団に出向し研究を継続。2024年4月から現職。
趣味はピアノ演奏と国内旅行(とくにローカル鉄道)。






